六角堂も金閣も! 寄せ集めで造った新しい古刹!? ／ 東京都世田谷区 世田谷山観音寺

頂法寺（ちょうほうじ）は、京都市中京区にある天台宗系の仏教寺院。
聖徳太子が六角形の御堂を建立したのが、寺の始まりであり、
御堂の形から「六角堂」「六角さん」と呼ばれ、親しまれているのであります。

頂法寺は生け花、発祥の地でもあるのです。
頂法寺には聖徳太子が身を清めたと伝えられる池の跡あり、
池のほとりに僧侶の住坊があったため「池坊」と呼ばれるようになります。
代々六角堂の住職を務める池坊の花の生け方が評判を呼び、
池坊13世専応がいけばな理論を確立し、華道家元へと至ったのであります。

また、頂法寺は京都の中心と言われています。
平安京造営の際、六角堂が建設予定の街路の中央にあったため取り壊されそうになり、
自ら北へ夜逃げするように移動したという伝説があるのであります。
その時、本堂の礎石が一つだけ残り「へそ石」と言われ、
京都の中心とされているのです。
しかし、それほど頑なに京都の中心に居座っていた
へそ石も明治時代初期にあっさり門内に移動されているのであります。
なので現在の京都は、微妙にへそ曲がり状態にあるのであります。




京都　頂法寺



そんな六角堂があるお寺を都内で探しました。
見つけました。
六角堂があるお寺は、世田谷区にある世田谷山観音寺。
通称、世田谷観音と呼ばれているお寺なのであります。


世田谷観音は三軒茶屋と祐天寺の中間点にあり、
昭和26年に建立されたお寺としては比較的新しいお寺なのであります。
戦後間もなく建てられたこの寺には、
戦争で命をささげた特攻隊員4615柱の英霊を祀る特攻観音堂や
戦争にまつわる様々な石碑があり、
下馬からジョン・レノンのように世界平和を訴えているのであります。

自分は以前、三軒茶屋に住んでおり、歩いて行ける距離でしたが、
全くノーマークだったのであります。


正門には、狛犬代わりに大黒天と恵比寿天が鎮座しています。
境内には、七福神がすべているそうです。






正門の恵比寿さん



正門を抜けると、本坊があります。
この建物は、旧小田原藩の代官屋敷を移築したもの。
本坊の前には、特攻勇士の像、さざれ石があります。
以前、他のお寺でさざれ石を見た時、
これが君が代に歌われるさざれ石か、と感動したものですが、
調べると結構、いろんなところにさざれ石はあり、
あまりありがたみを感じないのであります。




本坊


あゝ特攻


さざれ石



仁王門の前には、
珍しい金属製のメタリック狛犬がいます。
この狛犬、清国の第四代康熙皇帝があるところに進献されたものとのこと。
あるとこってどこなんでしょう？
この狛犬、胴体に継ぎ目があり、メカゴジラ感が出てカッコイイのであります。






メタリック狛犬




仁王門は、石油採掘で財を成した
新潟のウォルター・ウルフ　中野忠太郎の
家から移築したもの。
中野家の門は世田谷観音に、
ウォルター・ウルフのカウンタックは織田無道の手に渡ったのであります。




仁王門の仁王



この仁王門、なんと鳴き龍仕様になっています。
鳴き龍は天井に龍の絵が描かれていることが多いのですが、
ここの鳴き龍は３D仕様、木彫りの龍がついているのです。
通常、鳴き龍はお堂の中など密封された空間にありますが、ここは門。
音が抜けそうで、響かない気がするのですが？
試しに手を打ってみます。
う～ん、分からない。
さらに強く、もっと強くと手を打っているうちに、
自分の拍手の大きさで耳鳴りだけが響くのでありました。




仁王門の鳴き龍




境内にも恵比寿様がいます。
江の島に遊びに行ったのでしょうか？
何故か貝殻の首飾りが絡みついているのであります。




ネックレス恵比寿



境内の池の真ん中には、金の斧、銀の斧の女神のように
夢違観音が立っています。
この観音様、悪い夢を良い夢に変えてくださるといわれる観音様。
戦争の悪夢にうなされる人々を救うために作られた、
大和田獏のような観音様なのであります。




夢違観音




本堂である観音堂には、
本尊として聖観世音菩薩、
脇侍には日光菩薩、月光菩薩、布袋尊、マリア観音が
安置されています。
本尊の聖観世音菩薩はかって三重県の興昭寺の秘仏でしたが、
ここ世田谷観音ではeveryday サービス公開、
もはや秘仏の意味さえ分からなくなってしまうのであります。
本堂の入り口にある龍神様は、現在ボストン美術館にある
もともと福井城にあったもののレプリカ。
迫力があるのであります。






本堂




特攻観音堂は、元は宮家の持念仏堂で、
特攻作戦で亡くなった隊員4615柱が奉蔵された観音像が安置されているのであります。
左手前には、故吉田茂首相の世界平和の礎碑があります。
バカヤローと国会解散しておきながら、
しっかり世界平和を祈っているのであります。







特攻観音堂



不動堂は六角形の建物。
京都の六角堂を模した建物なのです。
こちらも新潟の石油王　中野忠太郎の家から移築されたもので、
もともとは仁王門と連結していたものらしいのです。
中野忠太郎の家、一体、どんな家だったのでしょう？
渡辺篤史なら探訪せずにはいられないのであります。







不動堂



阿弥陀堂は金閣を模した建物。
屋根にはしっかり鳳凰も載っているのであります。
もとは京都　二条城にあり移築されたものらしいです。
しかし、その姿は微妙、
まるで狭小地に建てられた三階建て住宅。
飯田のいい家で作っちゃいましたという感じなのであります。
二条城もこんな建物があったことに一切触れておらず、
京都人もそんな建物があったことを語ろうとしないようであります。







阿弥陀堂



世田谷観音は、戦後に建てられた新しいお寺。
しかし、そこにある建造物は全国から歴史ある建物を移築しており、
見事な古刹を形成しているのであります。

自分が訪れた日には、本堂では法事、
阿弥陀堂では不倫と思われるカップルがイチャイチャしていたため、
仏像を見ることができませんでしたが、
仏像も全国から歴史ある貴重なものを集めているのです。

新しい寺でありながら、建造物、仏像すべてが歴史あるもの。
しかし、そのすべてのバランスが微妙なお寺なのでありました。